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そして約束の日時、ゆかりの寺へ出かけた。
頼子は見えないところで守ると言っていたが、頼りになるのかどうかわからない。
「ややっ、叔母上!」
「まあ、益時殿」
感慨深いものがあった。兄の忘れ形見……。
守時が自刃したときに、後を追ったと言われているが、実は生きていたのだ。
「千寿王様はどちらに……?」
「それがいないの」
「ふたりでいらしてくださいと手紙に書いたはずですぞ?」
益時は動揺した声で言うので、
「それがいないの」
と繰り返して言った。
「夫の人質になるかもしれないから……」
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