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すると、益時はとんでもないことを言った。
「北条の姫というだけで、叔母上、あなたに利用価値はない。あなたの夫はまた別の、源氏の子孫の姫を妻に持つはずだからな」
「――っ」
益時の変わり身の早さに、めまいがしそうだった。
「わたくしも諏訪へ連れていってくれるはずでは?」
「ひ弱な子ひとりしか子供を産めない女に、何の利用価値がある。この場で死ぬのがいい。足利に対していい仕返しになるわ。父上――許してくださいますよね。裏切者の叔母が行きます」
益時の手は今は、首にあった。
苦しさに、汗がどっと出た。
呼吸が満足にできずに、息を求めて手を動かした。
(頼子殿! 約束が違うじゃないの。早くわたくしを助けにきなさいよ)
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