北条のゆくすえ

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 薄れゆく意識を手放そうとした瞬間だった。  そのときだった。 「赤橋益時。お方様をたばかった件は見ていたのだぞ。観念いたせ」  その声は、憎んでも憎みたらない声だった。 (まあ、……師直?)  きいん、きいん、と刃を交わす音。  もう耐えられずに、その場に横になった。 「お方様……。もうこんな騒動はいけませんよ。あなたはいつも通り保身を図ればいいのです」  師直の、意地悪な声がした。  しかし、その声は普段とはちょっと違って聞こえた。
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