第1章

23/30

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「僕はその頃、うちの事情で一人暮らしをしていました。家賃を払うためにモデルの仕事も始めていました。だから二人で会えるのは土曜日だけ。 僕も男です。会うたび彼女に触れたくて自分のものにしたくて… 彼女はホントに純粋で一緒にいることだけで幸せそうにしていました。そんな彼女を汚したくなるのを必死で堪えていました。 もうそれも限界で、僕から別れを告げました。 彼女を守れる大人になったとき、彼女に会いに行く。そう誓って断腸の気持ちで別れの言葉を告げました。 僕の言葉が彼女に衝撃を与え、雪が降りそうに寒いのに、コートも着ずに彼女は飛び出しました。 僕はコートを彼女に届けるために必死に追いかけました。それを写真に撮られ、インターネットにアップされました。」 悲しかった当時のことが蘇り、目頭が熱くなり目を伏せるとツツーッと頬を一筋の涙が溢れた。 あの時、苦しくて悲しくて、この世の終わりのような気分だった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加