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木村がこっそりと話しかけてくる。批判の空気を感じて、心臓が跳ねる。
「お前、正義感強いのはすごいと思うけど、ああいうのはよくないよ。だから孤立するんだ」
正義感ってなんだ?俺のさっき感じたあのイライラは、正義だっていうのか?お前はあれを正義だというのに、俺が悪かったっていうのか?
そういう疑問が頭のなかを駆け回って、最後に口に出てきたのは、それとはなにも関係がない吐き捨てるような皮肉だった。
「わざわざ忠告してくれてどうも。俺が非難されれば、お前も孤立するかもだしな」
木村はハッとしたように、息を詰まらせる。目を瞑って思い切り振ったナイフのような俺の言葉、明らかに傷ついた表情をした彼。いたたまれなくて、目を逸らした。
「そんなつもりは」
「いい、一限始まるから前向けよ」
まだ何かを言いたげな木村は、それでも言葉が出てこなかったのか、ゆるゆると前を向いた。一限はまだあとたっぷり10分は始まらないが、これ以上彼と話すことはなかった。
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