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「俺だって、どうせ孤立してるしね」
「ふふ、梶原くんは優しいよね」
「……」
俺は本当に優しいのだろうか。なにも佐藤に同情しているとか、坂本の代わりに怒ったとかではない。全部、俺がイライラしているだけだ。強者たちにも、弱者たちにも、自分自身にもだ。それを、佐藤はふわふわと笑いながら優しさだと言う。木村は正義感だと責める。自分の中のイライラと、周りの評価の乖離に、さらにイライラとしてしまうのだ。
「優しいわけじゃねえよ」
「そうかなあ」
それでも、クラスメイトや教室内の特定の話題に触れないときの彼女の話し方や笑顔は、のんびりと穏やかで、このイライラだらけの春の中でなんとなく落ち着く一瞬だった。
「桜が綺麗だねえ」
「俺、後ろ向いてるから分かんねえ」
「振り返って見ればいいのに!」
「めんどう」
「えー、そんなあ。わたし、桜味が好きなんだよね。なんで一年中売ってくれないのかなあ。特に桜餅!変わった味だけど、梶原くんは好き?」
「うーん微妙」
「微妙ってひどいよ」
「あれって桜どの部分の味なんだ?実?」
「花とか葉っぱ!実はさくらんぼじゃん!梶原くんは面白いなあ」
「どこがだよ」
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