かぐや姫

2/10
前へ
/10ページ
次へ
彼女は脅迫する気はないらしく、部屋の中をぐるっと見回して、 「そのお水が飲みたい。」と言って僕に、箱買いのペットボトルの水を要求して、それをいっきに飲み干すと落ち着いて笑顔になった。 僕は慌てて服を着た。 彼女の様子に普通の子だったと思われて、いや、この際、真相より彼女をアパートから追い出そうとおもった。 「早くここから出ていって!」と心で叫びながら、 「君は早く自宅に帰った方がいいと思う。お互いにこの事は全て忘れよう、絶対に誰にも言わないから大丈夫だから、ねっ。」 彼女をベッドから立たせると、軽く背中を押した。 「帰りたくない」と彼女は言って泣き出した。そして 「次の満月まで戻れない。」と。 「何だって?君は、嘘をつくにしても、もっとましなことが言えないのか?」 床にしゃがみこんでめそめそ泣く彼女はかぐや姫らしい。少々頭のおかしい美人を拾った僕に、月からのお迎えが来るまで置かせてと言う、何を言ってるんだ?絶対に駄目だ、お願いだからしばらくここに置いてください、お願いだから出ていって下さい、と延々とやりあって、僕の朝のバイトの時間が来てしまい、彼女を部屋に置いたまま出かける事になり、彼女はそのまま同居人となった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加