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足音、のようだ。それは少しずつ大きくなり、ふと、一度止まる。
音がした方をちらりと横目で見ると、下駄箱のそばで、靴を履き替えている女の人の姿があった。彼女はそのまま靴を履き、上靴を下駄箱に戻すと、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
そして、彼女は玄関を通り抜け一旦立ち止まると、この暗澹たる灰色の空を眺め、小さくため息を吐いた。
髪の短い、小柄な人だ。丸い瞳が特徴の可愛らしい人で、その小さな体躯のせいか、年齢通りの容姿には見えない。中学生と言っても通用しそうだ。
彼女は、どうして日曜日に学校へやってきたのか。部活だろうか。それとも、別の用事か。そういえばこの学校は、休日でも図書室を解放しているので、もしかすると、そこに用事でもあったのかもしれない。
彼女は空を見上げながら、俺の少し隣まで近づいてくる。こちらの身体が柱の陰にでも隠れていたためか、すぐ側にいる俺の存在には、気づいていない様子だった。
「……よく降りますね、雨」
俺は、その玄関から出てきた彼女にに向かって声をかける。すると、彼女は
チラリとこちらに顔を向けた瞬間、「えっ」と声を上げた。
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