序章。再会と終わり

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 だが。そんな風に驚いたものの、彼女はすぐに表情を元に戻す。そして、少しの間、目を閉じる。  声をかけずに、しばらく待ってみる。すると、ふう、と彼女は息を吐き、再び瞼を開く。次に、うん、と小さくうなずくと、ようやく口を開いた。 「――ちょうど、梅雨だから、ね。それにこの酉野市は、日本海側だから。降るときは、よく降るよ」 「確かに、そうですね。山陰地方ですからね」  それだけ答えて、俺と隣にいる女の人は、再び黙る。  何か会話をしたいのだが、何を話せばよいのか、その内容が思いつかない。思いつかないのであれば黙るしかないが、それでも何とか、「雨、止みませんね」とだけ、言ってみた。  
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