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第一章
渋谷の改札を出れば、灰色の空を吸い取るように高層ビルが建ち並ぶ。巨人のように人間とは違う生き物の顔をして、足元を人が大勢行き過ぎていくのをじっと見下ろしているようだ。その視界に、人はどれだけ小さな、そしてどんな存在として映っているだろう。
瑞透(みずき)は、電車やビルやブリッジなんかの人工の無機物も生きものだと思っている。
人がコンクリートやらガラスやら、建造物をつくる素材を創り終えた瞬間から、それらは息をしていると思う。それらの集合体である建造物は、だから生き物だ。でなければ、経年変化で老朽化を問題にすることもないではないか。
永遠に変化なく死した状態を与えられているなら、建て替えなんて必要はない。
彼らは自分と同じ、遅かれ早かれ寿命を迎えて、いつか呼吸を止める日を待ちながら、与えられた場所で与えられた役割を果たし続ける。
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