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武士は着崩した制服と同じようにアクリルのイスにしなだれかけていた大きい体をバネのように起こした。その勢いにつられるようにして、瑞透はスマホから目をあげた。
「別にいいよ。いつでも歓迎」
「うっしゃ! 夏休みっつっても部活しかねえし」
「じゃ部活やれよ」
「オレだってそうしたいわ。でもさー出禁だし」
「お前ほんっとバカ正直すぎんだよ」
「でもさ、このキーホルダーに誓ったのよ。オレ、自分で正しいと思った選択は、やりぬくってさー。だからさー」
「それ、あれだっけ? 日本代表になった……」
「そ、増田選手! 見ろ、このアクキーの後ろを。サインサイン」
「え、マジ? ガチ? パチもん?」
「あー武士たちうるさい。瑞透、オレは日程次第だわ」
「理人も来る?」
「だってオレも行ったことないよ」
「了解、いいよ全然。本家とか、部屋ありあまってるし」
「本家! うーわ、なんかすげーとこっポイ」
「うーわ、武士バカ丸出しっポイ」
「わ、そのでっけー図体で乗り出すな、倒れんだろ」
スマホの操作に集中していた他の友人もいつのまにか顔をあげて、会話に混じるようにして笑い声をあげた。騒がしさに、店内の客がわずかに眉をひそめた顔をあげて瑞透たちを見やった。
そのことに気づく気配もなく、瑞透たちはファーストフードに手を伸ばしながら、スマホや動画、学校なんかの話題に興じた。
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