シグナル

2/23
前へ
/106ページ
次へ
「今日は何講目までだ」と孝明が尋ねてきた。 「三講目の知的財産法」 「ふっふっふ。俺はこれで終わりだ。帰ってゲームやるんだ」 誰もおまえの予定など聞いていない、という言葉をぐっと飲み込む。こいつは放っておいたら魂までゲームに吸い取られるんじゃないかと思うほどのゲーム狂だ。 いま、僕たちがいる講義室は、この大学の中でも二番目の大きさの大教室。あと十分ほどすれば、社会環境学の講義が始まることになっている。出席を取られる講義だから、まだ講義が始まるまでは時間があるが、少しずつ教室の空席も埋まり始めていた。 「ところで、知ってるか、柊」 「何についてなのか言ってから訊けよ」 「やだなあ、これが現代っぽい喋り方なんだよ」 「昨今のバラエティ番組みたいで嫌だ」 「まさにそれをイメージしているわけだ」 「可愛い女の子ならともかく、おまえに言われてもな」 冗談のつもりだった。 「へえ。たとえば、あんな感じの?」
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加