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僕の言葉を聞いた孝明が、ひょいと講義室の前側にある扉から入ってきた女子学生を指差した。
胸のあたりまでのストレートヘアに、まっさらな新雪のように白い肌。申し訳程度にメイクが施された顔のパーツは、ぱっちりした瞳、細い鼻梁、ほんのりピンクに染まった唇、どれをとっても文句のつけようがなかった。ベージュのトレンチコートにグレーのリブニットプルオーバー、ブラウンのフレアスカートという着こなしは、女子大学生にはありがちでも、その子にはよく似合っていた。
「へえ。柊はああいう系が好みってわけか」
僕がぼんやりとその子の姿を見つめていると、孝明が勝手にそんなことをのたまった。
「勝手に決めるな、この野郎」
手近のルーズリーフの束を丸め、孝明の頭を殴る。その瞬間には、ぽこ、という間抜けな音を立てた。
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