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「恩知らず! わしがお前をスクラップ寸前から救ってやったのを忘れたか?」
「そんでも大佐殿、おらずーっと大佐殿の身の回りのお世話をやらせていただきました。どんでもロボットに突っ込むちゅうなら、死ぬしかねえ。ということは、論理的におらのご奉公もおわり、ちゅうこってすな! だからもう、おらなんの関わりもねえ、と思いますだ」
そう言うと三太夫はにやにやと笑った。
ばん、と大佐は戦車の外板をたたいた。
「もういい! 貴様がそんな考えだとは思わなかったわい! ああ、なんということだ……わしがせっかくお前をスクラップの山から掘り出してエネルギーを入れたとき、お前はなんと言うた? このご恩は一生忘れません。これからは生きるときも死ぬときも一緒ですと、涙ながらに誓ったあれは嘘だったというのか?」
三太夫は首をかしげた。
「おら、そんなこと言っただかね?」
大佐は砲塔から飛び出すと、三太夫が抜け出した操縦席へ飛び込んだ。
「もう頼まん! わしが操縦する!」
アクセルを踏み込む。
ぐわああんっ! と、戦車のエンジンが咆哮した。
戦車は動き出した。
目の前を通過する戦車を見送って、三太夫は頭に被ったヘルメットをはずし、つぶやいた。
「お達者で……」
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