ルース

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「お祖父ちゃん!」  叫んだ。  祖父は気がつかない。  戦車のエンジン音が邪魔しているのだ。  それを署長ははらはらしながら見守っていた。  いかん!  大佐は気づいていない。 「前へまわれ!」  署長は部下に命じた。  部下はうなずき、アクセルを踏み込み、ハンドルをきった。  パトカーは戦車の前方にまわりこんだ。  戦車を操縦する大佐はそれを見て、あわてて進路を変える。 「邪魔するなあ!」  怒鳴る。  思わずブレーキを踏んでいた。  エンジンの音がすこしだけ静かになった。  その瞬間をねらって、またミリィが叫んだ。 「お祖父ちゃん、馬鹿はやめて!」  その声に、大佐はぎょっとなってふりかえった。  ミリィが戦車にはらばいになり、じりじりと操縦席へ近づいてくる。 「ミリィ、そっちこそ馬鹿なことをするでない! すぐ降りるんじゃ!」  いやよ、とミリィは叫び返した。 「お祖父ちゃん、あのロボットに体当たりするつもりでしょう? そんなの絶対許さない……いいかげん、あきらめなさい。それに、軍隊が出動しているのよ!」 「軍隊……? 防衛軍か?」 「そうよ、署長が出動を要請したの。だからもう、お祖父ちゃんの出番はないのよ」  大佐はぽかんと口を開けた。 「防衛軍? あれほどわしの戦車を止めようとした署長が、軍隊を呼んだのか?」 「お祖父ちゃんが戦っても、それは民間人だから正式なものじゃないんだって。わかる? お祖父ちゃんは軍人じゃないのよ。こんな戦車引っ張り出しても、だれもほめてはくれないのよ」  大佐の口もとがへの字になった。 「わしは軍人じゃ! ステットンの町を守る……名誉ある……」  あとは小声になった。  うつむく大佐の肩に、ミリィがそっと手を乗せた。 「ねえ、もういいでしょう?」    ぐあああん……!    ふいに起きた轟音に、ふたりは顔を上げた。  ロボットが突進してくるところだった。
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