1

2/34
104人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
 風車が、風を受けてゆっくりと回っている。   「エリオット様、待ってくださいようっ」   「さすがエリオット様、一番足が早いなんて素敵」   「エリオット様、ノロマのヴィヴィアンが」    ここは隣国に面する片田舎の領地、その領主館に子供たちの駆ける元気な声が響く。 「早く来いよ、これでも遅く走ってるんだぞ。“ヴィー”! ちゃんとついてこいよっ」     ヴィヴィアンは短い手足を懸命に動かして、少し年長の彼らの後を追う。   「ひっ、はうっ、まってえ。“リオ”さままってえ……ふぎゃっ」    一緒に遊んでいた子供たちに追い付けず、ついに転んでしまった。 「大丈夫か?」       そう言って手を差しのべたのは、蜂蜜色の金の髪に、緑柱石色の瞳の少年と青年の間くらいの男の子。  五歳のヴィヴィアンより十歳ほど年上のその彼は、王都から来た偉い貴族さまの子息だと言う。両親からも、領主子息の少年エリオットからもそう教えられていた。 「立てるか?」  ヴィヴィアンに手を差し出してくれたのは、彼だけだった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!