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「私がいない間、学校で何か――」  ゆっくりとでも進んでいた歩みを止め、満帆臣愛莉華――エリは言葉を紡ぐ。 「――ッ!」 「フクちゃん……?」  言葉に詰まる僕の姿に、エリは心配そうにこちらを見つめる。  ――何でだよ。何で…… 「何か……?何かあると思ってたんなら、どうしてお前はあの時――いや、いい」 「ごめん……」  彼女がこの町を離れ、およそ二年。その間にも、この田舎町は相変わらず何もない緑ばかりの風景で、そして僕たちの関係もまた、時間が修復してくれることはないのだった。  それから、僕とエリの二人の会話は弾むこともなく、ただただ空虚な時間を過ごした。それはかつて何度も彼女と通ったことのある、慣れた道のはずだったが、今はこんなにも足取りが重い。…それもそうか。  変わらないものがあるように、変わってしまったものもある。…多分、もう、二年前までの親しい関係には、僕たちは戻れない。だから、今の僕に出来るのは、早くこの時間が終わるように願うことくらいで―― 「……エリ。どうしてまたこの町に戻ってきたんだ……?」  そのはやる気持ちは抑えることが出来ず、気づけば僕は、まだ口にするべきではないと思っていたその言霊を紡いでしまっていた。     
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