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校内に咲く桜の色と、校内を満たす生徒たちの笑い声。それに、ほのかに聞こえる小鳥のさえずり。それはまさにこの季節を彩るに相応しく、どこか温かい。
そんな四月の某日。誰もが新たな始まりに胸をときめかす始業式の朝、しかし僕の心は相変わらずフラットなままだった。…ソレを目撃するまでは。
「なっ!?」
式の途中、あまりに手持ち無沙汰だったので目を通した新たなクラス名簿。それがいけなかった。
満帆臣愛莉華。それはかつて、この町を去ったはずの幼馴染の名前だった。
◇
「エリ……」
式が終わり、教室へと急いだ僕は黒板へと書き記されたクラスメイトの席を確認する。…程なくして、彼女の席を知ることが出来た。窓際の後ろから二番目の席。そこが彼女の席で、そして何たる偶然か、僕の席は彼女の後方、つまり一番後ろの席だった。
それから、僕は担任が教室を訪れるまで彼女を待ち続けたが、ついぞ彼女が教室へ来ることは――
「……初日からギリギリか、満帆臣」
「すみません……」
――なかった。そう状況を整理しようとしていたところに、彼女は現れた。
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