同級生

10/50
前へ
/50ページ
次へ
「この街も錆び付いたよな。タイムマシーンに乗って昭和の時代に戻った感じだよ」 「へー、ジュリアンって平成生まれなのに、昭和の事に詳しいんだ」 「知らない、知らないよ。ただ錆びた看板なんかがそのままになっているから。そう言っただけ。これって勉強の話だから、不味いんだぞ、と。えっと」《急がないと、ナツミの眼線がまた怖い!》 「いい男を操るのって、面白いよね」 「えーと」《馬鹿を言うんじゃないよ》 「誤魔化さなくたっていいんだよ、ジュリアン。勉強の話じゃない。その話」 「まるで口頭試験じゃないか!」 「じゃ、わたしは試験官役になるわけね。それじゃ始めて」  ジュリアンと繋いだナツミの指が、《さあ開始するのよ!》、と言わんばかりに動いた。 「それにしても、ひとの通りが全然ない商店街だよね」  ジュリアンの「口頭試験」はこの言葉から始まった。 「そうよね」 「ずっとシャッターが降ろされたお店ばかりでさあ。いいわけがないよね」 「それは同感」 「つまりさあ、地方にお金が回っていない証拠なんだよ」 「へえ、そう言うことなんだ。次は?」     
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加