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「この街も錆び付いたよな。タイムマシーンに乗って昭和の時代に戻った感じだよ」
「へー、ジュリアンって平成生まれなのに、昭和の事に詳しいんだ」
「知らない、知らないよ。ただ錆びた看板なんかがそのままになっているから。そう言っただけ。これって勉強の話だから、不味いんだぞ、と。えっと」《急がないと、ナツミの眼線がまた怖い!》
「いい男を操るのって、面白いよね」
「えーと」《馬鹿を言うんじゃないよ》
「誤魔化さなくたっていいんだよ、ジュリアン。勉強の話じゃない。その話」
「まるで口頭試験じゃないか!」
「じゃ、わたしは試験官役になるわけね。それじゃ始めて」
ジュリアンと繋いだナツミの指が、《さあ開始するのよ!》、と言わんばかりに動いた。
「それにしても、ひとの通りが全然ない商店街だよね」
ジュリアンの「口頭試験」はこの言葉から始まった。
「そうよね」
「ずっとシャッターが降ろされたお店ばかりでさあ。いいわけがないよね」
「それは同感」
「つまりさあ、地方にお金が回っていない証拠なんだよ」
「へえ、そう言うことなんだ。次は?」
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