同級生

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 そう言うと島田は安吾の方へ向き直り、彼の髪の毛を掴んで、彼を身体ごと後ろの黒板に叩き付けた。安吾はキッと島田を睨み付けたがなにも口にしなかった。安吾は亜利沙の方へ言葉を投げた。 「保健室に着替えがある」 「樹里。そこまで言えるのなら、亜利沙に何故掛けた? 先生、樹里のような生徒、初めてだ。聞いたことがないぞ!」  島田は言った。それでも安吾は口を利かなかった。 「悪いけれど、今から自習だ。いいかな」  島田は、隣のクラスの教師にあらかたの事情を話して、自習時間の応援を求め、安吾の肩を押しながら彼を職員室へと連れて行った。その後校長室まで連れて行かれた。突然の事件に島田も戸惑ったが、そこでも安吾は口を割らなかった。温厚でしっかりとした心持ちの校長は、一方的に安吾を責めたりはしなかった。むしろ黙って彼を見詰めた。どちらかと言えば、彼の頑なさを気に入ったという風でもあった。  一方クラスでは、亜利沙が着替えのために保健室へ行っている間、夏実を初めとして全員で床の雑巾掛けをしていた。夏実は床の水の中に尿の匂いを感じた。それは夏実だけではなかった。雑巾掛けをするクラス全体が安吾の奇行を咄嗟に理解した。  廊下で声が聞こえ始めた。 「樹里、亜利沙に頭を下げるもんだ」  島田がぶつぶつと言っている。この幼い無言のふたりが島田には不可解でならなかった。     
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