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「みんなごめんな。先生今夜、ご飯食べられそうにありません」
と、ぼやきながら教室に入って来た島田を他所に、俯き加減の安吾への大きな拍手が投げられた。安吾は亜利沙の方を見た。
「相手が違うよ。ジュリアン閣下」
「ナツミ姫はあちらにいらっしゃいます」
その声の勢いに島田はあっけにとられる様子で、
「お前達、なんで窓を開けているんだ?」
と言うと、クラスは知らん顔でこう言うのだった。
「先生、決まったよ」
生徒達が次々に言う。
「俺、シュウゴ」
「ユカリちゃんだよ」
「俺は、ジョー」
「私、ええっと。エリ!」
*
ナツミが眼を覚ましたのは夜中の二時半過ぎだった。もう島田の顔を思い出すこともないだろう。仲の良かった初めてのクラスの会話ももう遠い昔だ。伏せて居た机の上のラムネの底から、最後の気泡が浮き上がって行くのを見送った。
2
《あの男の子、ジュリアンじゃないかしら?》
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