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「うるさいよ、ジュリアン! ちょっと来なさいよ」
ナツミの語気の強さと威勢のいい行動とに、青年達は眼を丸くして、蜘蛛の巣を散らすようにぱっと姿を消してしまった。男達の影が消えたのを見据えてから、
「ジュリアン、あのねえ、物事には見方ってものがあるよ」
と言うナツミの強い意志の言葉に反して、
「俺、そんなに馬鹿なのか?」
という感じの言葉が返って来る。
「ここの子供は温泉に浸っている気でいるから」
何処かピリッとしないジュリアンにナツミは、
「そういう言い方、あるよ」と叱咤した。「そうじゃないでしょう。分かってよ、ジュリアン。わたし、ジュリアンみたいなひと、諭したくはないんだよ」
しかしジュリアンは、
「分からないよな」
なんて言い出した。何処か深いところに貶められて気絶でもした方がまだマシだよ、と言わんばかりの感慨をナツミは抱いた。
「ジュリアン。そういう優柔不断はやめなさいよ。ジュリアンはそんなひとじゃない。ジュリアンって高校じゃ大変秀才な生徒だって聞くじゃない。わたしのもとにも名前が聞こえて来るくらいだよ」
ナツミは真剣になりたかった。彼を真剣にさせたかった。そこへジュリアンの瞳が遊ぼうとすると、ナツミの言葉はただごとではなかった。
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