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三浦が帰宅するのを待って、教員用の下駄箱の前で告白した。
「罰ゲーム?」
一言目で見破られた。そのときの三浦は、呆れてため息をついて、笑顔もなくて冷たい印象だった。
「違います。マジで先生が好きなんです。ウソじゃないです」
「そう、それは申し訳なかったね。でも、君の気持ちには答えられません」
「どうして?」
「君が生徒で、私が教師だから」
中学生という多感な時期だからこそ突き放した言い方。その上、理論立てて可能性が0%だってことを三浦は説明した。
「100%ありえないけど、君とそういう関係になった場合、世間に隠さなければない。もしばれてしまえば、私は仕事を辞めなければならないし、犯罪者にもなります。私には病気の母がいて、私の稼ぎで生活をしています。私が犯罪者になれば、母は生きていけません。私が殺すようなものです。だから、君とそんな関係になることはありえません」
三浦は誠司の反論なんて聞くそぶりも見せずに靴を取りだした。犯罪者や殺すなんて極端な言葉を使ったのは脅すため。子供が本気になってしまえば、その行動は自制が効かない。いくら教師が潔白を主張したところで、疑いが生まれれば消えることはない。過去に生徒との間で経験した苦悩があったからこそ、三浦は明確に拒絶したのだ。
「バレないようにすればいいじゃん」
「そんなの不可能だから」
三浦の視線も心もすでに帰宅へと向けられていた。眼中にないって背中で誠司に示していた。鼻で笑ったのはワザと。恨まれる方が面倒は起きないからだった。
「じゃあ、もし可能だとした場合、俺と付き合う可能性は何パーセント?」
イタズラ半分だった誠司の声色が変わった。きっかけは三浦の強固に拒む態度だった。三浦はヒールに片足を入れたところで、動きを止めた。振り向くと、誠司を見て深いため息をついた。
「失敗したな・・・君って逆に燃えるタイプ?」
誠司がイタズラっぽく微笑むと、三浦は残ったヒールに足を入れた。コツコツと乾いた音を鳴らして去っていく。その音は誠司の耳を通って、胸に響いた。それは夜になっても収まらなかった。
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