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放課後の2-8。三浦を待っていた誠司。だけど、いっこうに来る気配がないので職員室へ足を運んだ。三浦はいなくて、下駄箱へ向かうとすでに靴がなかった。
翌日の朝も職員会議で三浦とは話すことが出来ず、帰りに下駄箱で待ち伏せた。
「何で昨日来なかったんだよ」
誠司は声を殺したつもりでも、三浦の冷たい指先が誠司の口元を覆った。冷めきった三浦とは逆に、高揚した自分の体温を悟られたくなって、反射的に三浦の手を払ってしまった。
「ごめん」
優位に立つチャンスを自ら逸した誠司の謝罪。取り戻すべく紡ぎ出した言葉は懇願。
「俺たちは付き合っているんだからな」
「そうだったね」
三浦は誠司の感情を逆なでるようにとぼけると、無関心な顔を向けることなく靴を履き替え始めた。
「待てよ」
その言葉では止めようがなくて。
「付き合っているって認めろよ」
それも鼻で笑われるだけの遠吠えで。
「認めないなら、葛西のことバラすぞ」
脅すことでしか三浦の足を止めることが出来なかった。
「登録しろよ」
誠司はノートの切れ端を三浦に手渡した。そこに書かれていたのは誠司の携帯番号。
「後ででいいから電話しろよ」
そう言って別れたけど、いくら携帯を握り締めていても三浦からの連絡はなかった。文句を言ってやろうと翌日は30分早く家を出て、三浦が学校へ来るのを下駄箱の陰で待っていた。三浦が現れて近づくと、
「失くしたの。ごめんね」
先手を取られて、しかも謝られてしまっては文句の言いようがなかった。仕方なくまたノートの切れ端に番号を書いて渡した。だけど、その日も三浦からの連絡はなかった。
翌日の放課後は2-8に呼び出して、日曜に会う約束を迫った誠司。
「その日は無理」
「じゃあ、土曜日」
「その日も無理」
「じゃあ、来週は?」
「多分無理」
「ふざけんなよ。一日くらい合わせろよ」
「ここのところ母の具合が良くないの。検査もあってその結果次第で手術になるの」
嘘にしか思えないけど、真実であるならば、その気持ちは誠司には痛いほどよくわかった。誠司も小学校のときに母を病で亡くしたからだった。
「じゃあ、再来週は?」
「多分大丈夫」
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