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「3限目の休み時間に職員室に来なさい」
誠司は言われた通りに三浦のもとを訪れた。待ち構えていた三浦が勝ち誇った顔で出迎えた。3限目は三浦の授業で、そのプリントを運ばせるための呼び出し。プリントの上に三浦が飴を置いた。
「なにこれ?」
「ご褒美」
三浦なりの挑発だった。誠司はそれに答えるように眉間にしわを寄せた。
「何でこっちに来ないの?」
放課後の2-8。窓際の席から誠司を誘う三浦の言葉。外からふたりの関係がバレることを恐れた誠司の心理を弄んでいるつもりだった。
「行かねぇよ」
すでに板についた誠司の苛立ちの演技。三浦が立ち上がると誠司のもとへ歩み寄る。机に座った誠司の目の前で立ち止まった。普段は誠司の方が背が高いけど、机に座ったことでふたりの目線はぐっと縮まった。
「なんだよ」
先に視線を逸らしたのは誠司。理由は単純に照れたからだった。
「私の勝だね」
「何が?」
「にらめっこ」
「くだらねぇ」
誠司がふさぎ込むような態度をとると、三浦が嬉しがってその表情を見ようとする。それを誠司が嫌がって視線を逸らすと、追いかけっこみたいに三浦が視線を合わせようする。
「何で昨日は電話してくれなかったの?」
三浦の恋人みたいな甘えた言葉。それも苛立たせるためで、からかっているだけ。
「電話したって出ねぇだろ」
「待っていたのに」
「ウソつけ」
「ウソだよ」
三浦のウソは子供みたいにくだらなかった。それを求めてしまっている誠司がいた。三浦にこんな一面があるなんて思いもしない。きっと誰も知らないのだろうと思うと優越感を感じた。こんな放課後が誠司にとっては待ち遠しかった。
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