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誠司は部活を辞めた。といっても週に2回しか活動しない軽音楽部。本気で取り組む部員もいなくて、自分たちで曲を作る生徒は一人もいないコピーバンドばかり。そのくせ、妙に仲間意識が高くて、部活を休むとうるさかった。そんな音楽室で無駄な時間を過ごすなら、2-8で来るかもわからない三浦を待っている方が良かった。
「どうして部活辞めちゃったの?」
2-8で三浦がわかりきった質問をする。それに対して誠司はふて腐れてもちゃんと答える。不愉快なご褒美が誠司を満たしていく。
「奴らといてもくだらないからだよ」
「じゃあ、今は有意義な時間なの?」
三浦の誘惑めいた言葉はむき出しのトラップ。誠司の目の前に放り投げて、自分から引っかかりに行く誠司の姿を目の前で見て楽しんでいる三浦。
「そうだよ。三浦に会いたいからだよ」
「どうして?」
「好きだからだよ」
「どうして好きなの?」
「わかんねぇよ」
「罰ゲームなんでしょ?」
「今は違うよ」
「最初はそうだったんだ?」
「それは・・・」
「酷い子」
期待させられて、それに浮かれ、裏切られて、傷つけられる。それでも誠司は一緒にいたくて、一方通行の想いが深まっていくのを否定できなかった。
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