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「もうやめとけよ」
そう声を掛けてくれたのは、一緒に罰ゲームをした武人(たけと)だった。武人とは中学からの付き合いで、いつもつるむメンバーの仲でふたりっきりで話した経験はこれまで一度もなかった。
共通の友達がいて、たまたま同じクラスになって一緒にいるような関係。武人の言い方から察するに、三浦と放課後会っていることには気づいていて、どこまでの関係なのかはわかっていない。
「もっと周りに良い子がいるんじゃねぇの? 三浦にマジになったって問題になるだけだぞ」
武人は恋愛を語るような奴じゃないし、大して仲良くもない相手を心配するほど迷惑なお人好しでもない。不可解であるけれどそれ以上に気になったのは、どれだけの人が三浦との関係に気づいているのかってことだった。
「大丈夫だよ。気づいているのは俺だけだから」
誠司の不安を察した武人。こんなにも他人に関心を持つ奴だとは思っていなかった。
「武人はなんで気づいたの?」
「まぁ、何となくだよ」
あいまいにする必要がないところではぐらかされた。何か隠したいことでもあるのだろうと思ったけど、それが何かは見当もつかなかった。
「とにかく、普通の奴と恋愛しろよ。周りにいい奴いるって」
元々話すことはなかったけど、話してみてやっぱり反りが合わなかった。これ以上続けても武人は肝心なことは隠したままで、同じ会話がループしそうだった。
「ありがとう。でも心配ないよ。完全にフラれたから」
終わらせるために、ウソをついた。
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