雪虫

24/44
前へ
/44ページ
次へ
「もうやめとけよ」  そう声を掛けてくれたのは、一緒に罰ゲームをした武人(たけと)だった。武人とは中学からの付き合いで、いつもつるむメンバーの仲でふたりっきりで話した経験はこれまで一度もなかった。  共通の友達がいて、たまたま同じクラスになって一緒にいるような関係。武人の言い方から察するに、三浦と放課後会っていることには気づいていて、どこまでの関係なのかはわかっていない。 「もっと周りに良い子がいるんじゃねぇの? 三浦にマジになったって問題になるだけだぞ」  武人は恋愛を語るような奴じゃないし、大して仲良くもない相手を心配するほど迷惑なお人好しでもない。不可解であるけれどそれ以上に気になったのは、どれだけの人が三浦との関係に気づいているのかってことだった。 「大丈夫だよ。気づいているのは俺だけだから」  誠司の不安を察した武人。こんなにも他人に関心を持つ奴だとは思っていなかった。 「武人はなんで気づいたの?」 「まぁ、何となくだよ」  あいまいにする必要がないところではぐらかされた。何か隠したいことでもあるのだろうと思ったけど、それが何かは見当もつかなかった。 「とにかく、普通の奴と恋愛しろよ。周りにいい奴いるって」  元々話すことはなかったけど、話してみてやっぱり反りが合わなかった。これ以上続けても武人は肝心なことは隠したままで、同じ会話がループしそうだった。 「ありがとう。でも心配ないよ。完全にフラれたから」  終わらせるために、ウソをついた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加