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「お友達になってください」
わたしは戸島真琴さんにお手紙を渡した。
受け取った手紙を読んでわたしの顔を交互に見た戸島さんは低めの声で訊いた。
「ええ、はい。うん。……私で良ければ。……いいの?」
わたしはそのとき今まで人に見せたことが無いほど目を輝かせていたと思う。
「よろしくお願いします!」
戸島さんに失礼のないよう身体を45度倒し頭を下げた。このお辞儀の仕方は『最敬礼』と言って一番丁寧なお辞儀らしい。
幸い放課後の教室はふたりきりだったので周りの視線を気にしなくていいけど、この状況をほかの人が見たら戸島さんがわたしを謝らせてるようで誤解するかもしれない。
不肖、鴻池静枝は「お友達になって」と自分から言ったのは幼稚園以来で面と向かい、想いを込めた手紙を渡すことなんて、ましてや、初めてのことだった。
よく、友達なんて自然にできるっていうけど、戸島真琴さんは自然には友達になれないタイプな気がした。わたしにとって特別なんだ。
正直、戸島さんとわたしの接点はクラスが同じ……以上! その他に何も無い。
戸島真琴さんの印象はクールというのが最初だった。短い髪、声をわざと低くしているのか元々なのか少年声みたいでクールな印象に拍車がかかる。
彼女が授業で返事するときの声は女子校ではけっこう目立つ。
対象的にわたしは髪は肩より長くて、声は仔犬に例えられるほどに高い。
戸島さんと初めて面と向かうと自分とのギャップを感じざるおえなかった。
もちろん容姿についてのこと。本音をいうと、ぜんぶ。
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