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気が付いたらだいぶ時間が経っていたらしく夕陽が教室のわたしたちを照らしていた。
「ええと。鴻池さん、遅くなってきたし、もう帰ろうか」
「あ、あの一緒に帰って良いですか?」
わたしは恐る恐る尋ねた。
「もともと、そのつもりだよ」
思わずわたしは戸島さんに勢いよく抱き着いてしまっていた。
「戸島さん優しい!」
勢いよく抱きついってしまったので倒れないように戸島さんは踏ん張りながら言った。
「ふ、普通だよ!」
「ごめんなさい! うれしくて!」
これが戸島真琴さんとお友達になった経緯である。
下駄箱まで不思議と会話が無かった。というより、会話ができなかった。でも、放課後まで付き合ってもらったから、わたしからこの沈黙を破らなければいけない。
「戸島さん、ありがとう。お友達になってくれて」
「私も鴻池さんのこと、気になってたから」
わたしは取ろうとした靴を掴んだまま固まった。と、戸島さんがわたしのことを気になっていた? それは、どのように? 良いほう、良くないほう?
訊きたいけど頭の処理が追いつかず、なんとか言葉を紡ぎ出すことだけができた。
「え、へへへ。うれしい」
これがわたしの精一杯の言葉だった。
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