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「私は人の苗字を覚えるだけで精一杯なんだ。えっと……し、静枝……さん」
戸島さんが私を下の名前で呼んでくれた! 言わせたに等しいけど嬉しい! さん付けじゃなくても良いんだよって言おうと思ったけど、なんかお嬢様学校みたいで良い!
「フフフ、わたしも戸島さんのこと真琴さんって呼ぶね」
真琴さんは意外そうに目を大きくしていた。
「私の名前覚えててくれたんだ」
そんな真琴さんの反応が面白かったのでわたしはちょっと調子に乗ってみた。
「自慢じゃないけど、わたしは当日にクラスメイト全員の名前を覚えたんだ。どうだ、すごいだろ。エヘン、エヘン」
「静枝さんってさ……かわいいね」
切れ長の凛々しい目が笑う。
戸島さん、いや、真琴さんにかわいいって言われた。
「はい!?」
わたしも負けずと真琴さんに言ってやることにした。
「そ、そういう真琴さんはカッコイイよね」
「うん。よく言われる」
……こちらは言われ慣れていらしたか。
「背が高いからかな?」
「声……。わたしは真琴さんの声、カッコイイと思うの」
「声? うーん、それは初めて言われたかも」
本当は本を読んでいる姿で一目惚れしたんだけど、引かれそうと思ってあえて言わなかった。それに、わたしの胸の内にまだ秘めていたいとも思った。
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