夕暮れのシルエット

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「あと、よく言われるのは、いつも本を読んでいるところ……とか?」  誰だ、言ったやつ。切り刻んでやろうか。  しかも、よく言われるとまで言われてしまって、もう言うタイミングが完全になくなってしまった。いや、声をカッコイイと言ったのはわたしが初めてみたいだし、つまり、初めては死守したわけだから、むしろ良かったのではないか。  見知らぬミーハーに怒りを感じつつ話題を変える方向にすることに。 「ま、真琴さん、本好きだよね」 「うん。静枝さんは本好き?」 「人並よりは読んでる……と、思う」  これは意外なことにも嘘じゃなく。昨今の若者の活字離れとは逆行し、わたしこと、静枝さんは本を読む人類なのだった。 「それじゃさ。今度、私の家に来ない? 珍しい本ね、いっぱいあるの。どう……?」 「は、はい。喜んで行かせていただきます!」  突如として真琴さんとのデートが決まった。
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