プロローグ、僕らにある光

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 ところで僕は、どこの部活にも所属していなかった。小さな頃からテニスをやっていたので、中学時代にはテニス部に入っていたのだが、体育会系特有の暑苦しいノリと、弱者に対する過剰なバッシングが日常的に行われる陰湿さに嫌気が差してしまったのだ。そしてさらに厄介だったのは、彼らは日常生活においては極めてまともそうに見えるということだった。  だから僕は高校生になってからは部活というコミュニティを得ることをやめた。体育会系は当然のこと、人が集まる以上、文化系の部活にだって少なからずそういうヒエラルキーは存在していたからだ。僕はもう誰にも干渉されたくなかった。  おかげで僕はクラスの中でもとびきり地味な存在となった。世間話をする相手くらいはいたが、深いところまでは決して踏み込まなかった。だから向こうからも、僕に踏み込んでくることはなかった。高校の誰もが、僕のことを知らなかった。教師ですらも、ちょっと成績の良い印象の薄い生徒くらいにしか思われていなかっただろう。  そういう意味では、僕がいじめの対象にならなかったのはちょっとした奇跡ともいえた。私立高校だったから、ある程度しっかりした家の子どもしかいなかったおかげかもしれない。とにかく僕が過ごした三年間の高校生活において、僕がいじめられることは無かったし、誰かがいじめられている現場を見たこともなかった。――あくまでも、僕が見たことがなかったというだけの話だが。
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