紫煙

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彼の帰った後、ベッドの中でしばらくぼーっとしていたが、彼が出て行った時のまま、鍵が開けっ放しなことを思い出して、慌てて布団から起き出す。 部屋の明かりをつけ、フラフラとした足取りで玄関に向かって鍵とチェーンをかけ、またフラフラとベッドに戻る。 そこに腰をかけ、この数ヶ月に心の底に溜まったイライラが噴き出るのを抑えるため、サイドボードの上に置かれた細いメンソールに火をつけた。 紫煙がベッドルームの上でユラユラと蠢き、一瞬、数時間前の自分の姿が重なった。嫌悪感がムラムラと沸き上ってタバコが急に苦くなり、タバコを灰皿に押し付けた。 私はタバコはこの部屋でしか吸わない。だからタバコを吸うことを知っているのは、彼を含めてこの部屋に来たことのある数人だけだ。 タバコはここ数ヶ月で覚えた。 この部屋を訪ねてきた二つ下の妹が忘れていったタバコを、今度妹が遊びにでもきた時にでも返そうと取っておいていたのだが、興味本位で口にしたのが最初だ。 人の道を踏み外してしまった自分ならタバコも似合うはず。 汚れたならトコトン自分を汚してしまおう。 そしてオトコに舐められない強いオンナになろう… きっかけはそんなもんだ。 でもそれ以来タバコを止められずにいる。 妹はどういうきっかけでタバコを吸うようになったのだろう?     
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