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翌日。
私はスマホの中の彼の電話番号を表示したまま、既に何分も固まっていた。
このことを聞けるとしたら、彼だけだ。
でも、昨日は酔っていてそう思っただけで、もしかしたら勘違いかもしれないし、そもそもあれがキスマークだったのかも怪しい。
私は悩んだ挙句、聞けば心の負担も軽くなれるかもしれないと、勇気を振り絞って彼に電話をかけた。
「もしもし?山田です」
平静を装って事務的に話しかける。
「お久しぶり。会社では毎日顔を合わせてるのに、話しをするのは本当に久しぶりだね」
彼は以前と変わらない砕けた感じで応じる。
「で、今更なに?山田マネージャーさん?」
彼はからかうように質問してきた。
私は、自分で電話をかけたくせに何も喋れなくなる。
一体どう聞けばいいんだろう。
「もしかして、僕に聞きたいことがあるんじゃない?夫婦上手く行ってんのか、とか、また新たに誰かと不倫してるんじゃないかとか」
なにも言えなく私に、そう言って彼は笑う。
聞けない私を見透かしたかのように。
「言わないよ。君も今苦しんでるんだろ?
で、『関係ないよ』って言ってもらって楽になりたいから僕に電話してきたんだろ?
苦しんだらいいよ。
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