最終章.晴煙

3/5
前へ
/47ページ
次へ
心の中の“免疫”ができてしまった、もしくは“ハードルが下がった”という方が分かりやすいかもしれない。 だから、しばらくは、恋はいらない。 一生一人で生きていくつもりはないけど、今はそんな気にはなれない。 なんて言いながら、明日には気が変わっているかもしれないけど。 私は妄想を切り上げ、仕事に戻る。 整理していた山積みの書類の下の方から、A社への仕様書の初期のドラフトを見つけた。 とりあえず納品が終わったので、A社の案件は、これでひと段落だ。 気の早い部長からは、『これは社長賞ものだぞ!』と言われているが、そこまでのことなんだろうか。 本当に自分としてそこまでのことをしたと、イマイチ実感が分からない。 本当に自分の力でやり遂げたのだろうか… わかんないや。 なんだかなあ…。 まあしばらくはゆっくりできそうだから、リフレッシュして、また頑張るか。 来週は3日ほど有給を取らせてもらおう。 そう思い、久々に有給申請を行う社内サイトにログインしようと画面を立ち上げた。 「パスワードなんだったっけ?」 有給申請自体が久々すぎて、パスワードが思い出せない。 5回連続でログイン失敗すると、システム管理部にロック解除申請を、私の上司である部長から送ってもらう必要がある。     
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加