最終章.晴煙

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それだけは是が非でも避けたいので、ログイン画面の横の『ヒント』をクリックする。 ポップアップしてきたヒントを見て、私は重要なことを忘れていたことを気づいた。 A社の案件、彼との決着、その後に襲われた社内での騒動で、すっかり忘れていた。 私は腕時計を見る。 いつの間にか17時を回り、18時が近くなっていた。 有給申請よりも先に済ませないといけない大切なことを思い出した私は、パソコンをシャットダウンすると、慌てて退社した。 時間的にもう一人暮らしのアパートに帰っている頃だろう。 本当は電話してから行くべきなんだろうけど、もう何ヶ月もそれを忘れていた以上、今更電話するのも恥ずかしい。 “直接会って話したい” 今はそう思った。 電車を乗り継ぎ、昔何度かきたことのあるアパートの前に立つ。 下から見上げる二階のその部屋は、灯りがついていた。 私はその部屋の前に立ち、呼び鈴を押す。昔のタイプの部屋なので、部屋の中でチャイムが鳴っているのが外まで聞こえる。 足音がこちらに向かい、ドアスコープからこちらを覗いている気配を感じたと思った瞬間、ドアが開いた。 「お、お姉ちゃん、どうしたの?」 妹が、びっくりしたような、それでいて、ずっと私が来るのを待っていた嬉しさを一生懸命隠しているような、複雑な表情で出迎えてくれた。     
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