最終章.晴煙

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~パスワードを忘れた場合のヒント~ 『あなたの大切な妹の名前は?』 「ごめんね。ユカリ。貴女のおかげで、私…」 そこまで言ったあと、そこから先は涙があふれて言えなかった。 久しぶりに見た妹の顔。 私を元気づけようとわざわざ会いに来てくれた妹。 喧嘩別れして追い返してしまったままだった妹。 私のために、フラれた元カレにまで連絡を取ってくれた妹。 言いたいことは沢山ある。 お姉ちゃん、自分でも変わらなきゃって、あれから頑張ったよ。 あの彼ともちゃんとお別れしたよ。 ユカリが紹介してくれた仕事も頑張って成約したよ。 そして、タバコもやめられたよ…。 「今までお礼言えなくてゴメン」 言いたいことは山ほどあるのに、それだけ言うのが精一杯だった。 私は、無言で妹に抱きつきながら、長年心の中を覆っていた煙がすーっと晴れていくのを感じた。
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