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緑煙
「山田マネージャー、おはようございます」
私が自席に座ると、今年からこのフロアに配属された新人の1人、ユミコが、掃除をしていた応接ブースから走り寄り挨拶してきた。
おはよう、と声をかけて新聞を開く。
ユミコが給湯室に向かい、彼女の日課の一つである私のためのコーヒーを淹れて持ってきてくれた。
コーヒーとサンドイッチを片手に始業時間まで日経新聞を読むのが、ここ数年変わらない私の朝のルーティンだ。
私は一応有名私立と言われる関東の大学を卒業後、地元に帰ってこの会社に入った。地元では中堅と呼ばれている会社だ。
子供の時から大学までは、華やかさはないものの比較的恵まれた道を歩んできたと思う。
でも、就職活動で躓いて地元に帰らざるを得なくなり、第3志望だったこの会社に入ったあたりから、波乱の人生が始まった。
同期の総合職は20人。その内女性は私を入れて5人。
33歳でマネージャーの肩書きが付いているのは、同期の男性全員と、女性では私だけだ。
それだけ見たら、恵まれていると言えるのかもしれないが。
「田原マネージャー、おはようございます」
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