緑煙

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ユミコの声でふと顔を上げると、同じフロアの隣のチームの彼が出勤し、自席に向かうところだった。 歩きながら他の社員達とも挨拶を交わすが、私の方には近寄らないルートを歩いていく。 私もチラッと目をやっただけで、何も言わずに再び新聞に目を落とした。 彼、田原マネージャーは、私の二つ年下で、彼の同期の中では一番最初にマネージャーに昇進したエリートだ。 そして、私の部屋で会う関係になって、もう1年になる。 いつからそんな関係になったのかは、漠然としていて覚えていない。 かつて私が仕事でミスをして落ち込んでいた時に、私のことを親身になって慰めてくれたのが彼で、それからの関係だったのは間違いないが…。 いつのまにか、そんな関係になっていた。 そういえば、彼と私は、マネージャーとしては同期だ。 私は、自分の同期の男性より2年遅れで昇進したことを意味する。 それまで私は、自信満々で生きてきた。 仕事では誰にも負けないというプライドと、それに伴うだけの結果を残してきたのだが、それだけでは抗えない何かを感じ始めていた。 焦り? 妬み? 女のくせに? やっぱり女は…? 肩肘張ってプライドを維持するのに必死になって周りが見えなくなっていた私が、仕事で大きなミスをするのはそれから間もなくだった。     
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