明煙

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明煙

彼と一方的に別れてから数週間後のある日。 「山田、ちょっと」 部長に呼ばれ、仕事の手を止めて部長のデスクに赴く。 「隣町のA社から見積もり依頼があったんだけど、その際に担当者としてお前をご指名なんだが、お前何か知ってるか?」 この辺りで暮らす市民であれは、大抵の人がA社がどんな会社かは知っている。 この辺りでも大手の企業だ。 だが、我が社はまだ取り引きは無い。 歴代の営業部の担当者がどれだけ苦労しているかは、企画部の長い私でも知っている。 そんな大きな会社からのオファーで、企画の担当者として自分を指名… 過去の接点なんてあったかな…? 何故、A社が私の名前を…? 過去担当した別のクライアントの紹介かな…? 何れにしても、仕事を断る理由はない。 「どういった経緯かはわかりませんが、私の名前を出していただけるのは光栄です。是非私にやらせて下さい」 「そうか、じゃ頼むよ。我が社念願のA社との取引開始ができるかどうかの瀬戸際なんで、お前じゃちょっと不安だけど、向こうがお前をご指名じゃ仕方ない。オレをがっかりさせないようにしてくれよ。 あ、内容とか詳しいことは営業の山岡から聞いてくれ」     
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