140人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
明煙
彼と一方的に別れてから数週間後のある日。
「山田、ちょっと」
部長に呼ばれ、仕事の手を止めて部長のデスクに赴く。
「隣町のA社から見積もり依頼があったんだけど、その際に担当者としてお前をご指名なんだが、お前何か知ってるか?」
この辺りで暮らす市民であれは、大抵の人がA社がどんな会社かは知っている。
この辺りでも大手の企業だ。
だが、我が社はまだ取り引きは無い。
歴代の営業部の担当者がどれだけ苦労しているかは、企画部の長い私でも知っている。
そんな大きな会社からのオファーで、企画の担当者として自分を指名…
過去の接点なんてあったかな…?
何故、A社が私の名前を…?
過去担当した別のクライアントの紹介かな…?
何れにしても、仕事を断る理由はない。
「どういった経緯かはわかりませんが、私の名前を出していただけるのは光栄です。是非私にやらせて下さい」
「そうか、じゃ頼むよ。我が社念願のA社との取引開始ができるかどうかの瀬戸際なんで、お前じゃちょっと不安だけど、向こうがお前をご指名じゃ仕方ない。オレをがっかりさせないようにしてくれよ。
あ、内容とか詳しいことは営業の山岡から聞いてくれ」
最初のコメントを投稿しよう!