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年下っぽいし、そこまで考えられないかな。ピアノは意外だったけど。タイプ違うっていうか、別の世界の人って気がする。初日に丁寧な口調で話をしてくれた彼の意外な一面を知ったものの、興味の惹かれる相手では無かった私はこの場をすぐに去った。
雪乃さんに連れられリフレシュルームはゲーム機の部屋だということを知り、図書ルームは本の置き場所で、一番驚いた場所は地下室だけだった。
「んー……一応、あそこも紹介しとくか」
雪乃さんは乗り気ではなさそうに迷いながらも厨房へ足を向けた。
実は昨日の夜に来てたんです、なんて言えない。
西尾がいる厨房に辿り着くと、厨房前には予想通りの光景が広がっていた。顔が良くて、料理が美味い、でもキザで最悪なあいつの何がいいのだろう。
「うーん……ここに群がってる子たちは、あいつの表面しか見てないな。確かに見た目いいし、腕も確かだけど、内面までは探ってないっていうか」
どういう意味だろう……?
姉だから分かることなのか、人気者の弟のことを想った発言なのかは分からなかった。
「はいはい、ごめんなさいね。ここ、通らせて」
問答無用に女性たちをかき分けて、厨房の中へ突き進むわたしたち。雪乃さんの後に付いて行きながら、女性たちから冷たい視線と舌打ちが聞こえた。
「……ちっ、何様なのあの女……」
中に入ると炒めた野菜が宙に舞う程、華麗な鍋さばきで調理する西尾の姿があった。黙って鍋を振るっている姿を見ると、口調とのギャップに思わず見惚れてしまっていた自分がいた。
「調理してるとこ、失礼するよ」
容赦なく、弟に話しかけるお姉さん。
「……あん? げっ姉貴。何だよ、何しに……」
雪乃さんの後ろに隠れていた私を見た途端に、笑顔に変わる西尾。
「んんっ。どうしてここに来たので? それも彼女と一緒にだなんて」
「あんた、いい加減にしな? 調子よく女の子達を誘って、その落とし前はつけられるわけ?」
「落とし前って……いや、あの子らは別に。それに、俺はもう半端はやめた。特別な子を見つけたからな」
「はぁ? 嘘……そんなコ、聞いたときないけど、誰よ、それ」
「あ、あの~……」
姉弟喧嘩が始まりそうだったので、話を遮ることにした。
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