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「……認めたくないけど、美味しいです。もしかしてどこかで料理人、してたんですか?」
「まぁな。……ま、そのうち教えるさ」
「ここの食事はあなたが?」
「名前で呼んでくれよ。俺は西尾高大(にしおこうだい)!こうちゃんでいいぜ」
「西尾さんで」
「おいおい、他人行儀だな。それにさん付けは無いぜ! それだと姉貴と同じだし」
「他人です! じゃあ、西尾で」
一瞬、驚きながらも満更でもない表情で嬉しそうに笑う彼。
「君のことは何て言えばいい? 名前聞いてなかったよな?」
「何とでも」
名前を教える気にはなれない私は、首を横に振った。
「そうか、まぁ……後で互いに呼び合うことになるから、大事にとっとくか!」
昨日会った時から変わらずに、調子のいいことを勝手に話している彼。
「じゃあ、またな!」
そう言うと、調理に戻っていった。朝に出会った時の最悪な印象は変わらない。ただ、口中に広がった甘酸っぱさは、ここでの生活に希望を見つけた。そんな気がしながら、部屋に戻ることにした。
最悪な朝の始まりから、何かが変わりだすような予感を漂わせながら――
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