18人が本棚に入れています
本棚に追加
2.溶けだす心
んんー……お母さん、ご飯。寝ぼけた私の声に返事がなく、外から鳥の囀る声が聞こえるだけだった。
……あ、そっか。もう家じゃなかったんだ。ベッドの中で、背伸びをしながら体を起こした。
外に出る用事もないので、部屋着のまま朝のテレビを見る。テレビから聞こえてくるのは、占い。
「今日の貴女は、多くを学ぶでしょう!」
はぁ? 学ぶって……学生でもないのに、ホント適当だ。とりあえず、朝食食べに行かなきゃ……
下の階へ降りて、広い部屋に行くと大勢の男女が各々で好きな場所に座っている。テラス席、ソファー、テーブル席、カウンター。
パッと見ただけで50人近くの人たちが、思い思いの所にいた。
どこに座ればいいんだろう……まだ来たばかりの私に仲の良い人なんているはずもなく、適当な所に座ることを躊躇させた。
「あまねっちー! こっちこっち!!」
聞き慣れた声のする方を見ると、昨日のお姉さんが手を振っている。カウンター席へ誘導されて、雪乃さんの隣へ座ることになった。
「おはようございます」
「うん、おはよ。よく眠れた?」
「あ、はい。おかげさまで眠れました」
「おはようございます!!」
雪乃さんに向かって、お辞儀をしながら挨拶をする人の数が半端じゃない。この人はどういう人なのだろうと気になって、聞いてみた。
「あ、あの……雪乃さんって、その……どういう?」
「あれ、言ってなかったっけ? ごめんごめん、私、ここの管理者なのよ」
「ええっ? か、管理者?」
「一応、資格あるよ。あ、だからといって、権限で弟を住まわせているわけじゃないよ? 昨日も言ったけど、才能あってもそれをくすぶらせてるあいつが嫌でね」
何の才能なのかまでは知らないけれど、身内としては放っておけない心情なのかな。
「そ、そうだったんですね」
「あはは、ヤだなぁ。あまねっち、急に敬語じゃん! とにかくさ、ここで暮らしてる皆は色んなモン抱えてるってこと」
バンバンと、私の肩を叩きながら笑って話してくれた。ここの料理はバイキング方式らしく、あらかじめお皿やトレーに盛り付けられている。
自分で好きなおかずや、ご飯、パンを選んで食べられるようだ。
最初のコメントを投稿しよう!