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少年が初めてまともにラングの顔を見た。その瞳は透き通り、青味がかった美しいヘーゼルグリーンをしている。初夏の木漏れ日のような眩さにラングは一瞬見とれそうになったが、そんな場面でもあるまいと気を取り直した。少年はもちろんそんなこととは気がつかない。
「"牛殺し"の手下を匿ってたら、そっちだってヤバいだろ」
「そんなことあるもんか」
反射的にラングが答えた。答えてから、「あれ?どうかな?」と首を捻る。あんまり考えなしの様子に、少年の肩からふっと力が抜けた。どうもこのトマト頭、話しているとつい乗せられてしまう軽さがある。自分でも知らない内に少年の口数が増えた。
「あんた、馬鹿なの」
「いや、違う。そういう意味じゃなくて、だな。そりゃあロブの手下ってのは今、世間体があることぐらいわかってるさ。でもお前、ハンの方ってことになってるぞ」
「はぁ?なんで?」
「髭もじゃが吹聴してまわってる」
ラングが赤い頭をフルフルと振った。少年がベッドに浮かし掛けた腰を戻し、銃を弄びながら口を尖らせた。
「あのオッサン、隣村の人間じゃないくせに。誰がどっちの派閥かなんて知らないで、てきとう言いやがって」
今度はラングが呆れる番だった。
「無関係の人間と決闘になんか、どうやったらなるんだ?」
「宿のロビーででかい声で噂話してたんだ。はじめはアレックって、ロブが殺したことになってる男さ、あいつを批判してたから聞き流してたんだけど、急に矛先がロブに向かったからブン殴った」
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