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笑うと驚くほど無邪気に見える。不思議な少年だとラングは思った。昨日の気配はそこらのチンピラでは及ぶべくもない鋭さがあったが、こうして話せばやはり幼く、意外なほど素直でもあった。生来の性格か、それとも、そのロブや無宿者の仲間たちといい付き合いをしていたのか。少なくとも、仲間のために怒れるほどには心優しい少年なのにちがいない。
「そんな後先考えずに飛びだすほど、ロブってやつを尊敬してたんだな」
「尊敬?」
少年が幼さの残る目を瞬かせて首を傾げた。ラングも首を捻る。おかしなことを言ったつもりはない。
「そうか。尊敬か……考えたことなかった」
「なんか変なやつだな、お前」
「うーん。そこは怒っていいところな気がするけど、やめとくよ。あんたは悪い奴じゃなさそうだから撃ちたくない」
「人を撃つ前提なのもどうかと思うけど、善悪だけで人を判断するなよ。善悪なんて曖昧なもんだぜ」
少年がまた不思議そうに瞬きした。これが幼く見える原因かもしれない。
「あんたはロブのこと責めないの?」
ラングはうーん、とわざとらしく顎に手を当ててから、少年に向かってとぼけた顔をした。
「ロブのことは知らないが、お前のことは責めない」
当たり前のことを言っている顔だった。
「お前のこと気に入ったからな」
「……よっぽど曖昧な判断基準じゃないか」
少年が思い切り顔を顰めた。だが銃を握る手はだらりと下がっている。ラングは笑った。
「俺は曖昧な人間だから、はっきりした理由は自分でもわからん」
「曖昧っていうか、てきとうなだけじゃないの」
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