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少年が呆れてため息をついた。ラングはまた声をあげて笑う。
「……本当に、あんたは嫌じゃないの?」
少年の声が、微かに変わったようにラングは思った。表情にもどこか淋し気な雰囲気が漂っている。愁いを帯びた横顔は、突然、妙に大人びて見えた。ここへ来るまでにどれほどのことがあったのかラングには想像もつかないが、この少年が同年代の子どもらに比して長閑な生活を送ってきたわけではないことだけは確かだった。
「つらかったろうな、ずいぶん」
口をついて出たことばに少年がピクリと肩を震わせた。知った風なことを口走って少年の気に障ったかと、ラングは慌てて取り繕おうとした。
「悪い。今のは、その、悪気があったんじゃなくて……」
その後、言いかけた語尾をラングは忘れた。少年があんまりじっととこちらを見ている。初めて見る種類の生き物に出会ったような、怪訝さと好奇心の入り混じった目だったが敵意は感じなかった。
ラングもラングで少年の表情が気になってついじっくりと見てしまったのだろう。少年が不意に目をそらした。
「ごめん。しばらくそんなことは言われてなかったから、驚いて……」
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