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今は二人、地元を離れたこの港町で小さな飯屋をやっている。料理はほとんどマーロが作る。ラングは接客担当で、この町に辿り着くまでにあちこちを巡った思い出話と、その経験を活かした料理と音楽は両方なかなか評判だった。
朝は二人か、あるいはマーロだけで市に行く。昼の営業を終えると、夜の仕込みで忙しいマーロのために足りない物を買いに行ったり、となりの酒屋の荷物を配達したり、雑用や副業はラングの役目だ。この時も食材をドッサリ詰めた買い物袋を抱えて帰るところだった。
木陰で休もうとしたラングの傍を、男たちが急ぎ足で通り過ぎていく。家の窓や玄関から心配そうに顔をのぞかせている女たちに、眉をひそめて囁きあっている者もいた。全員がラングたちの店の方を見ている。こちらに気が付いて気の毒そうな視線を投げるやつもいる。見れば、店の前で二人の人間が空気を緊張させて対峙していた。
「嘘だろ!決闘!?」
ラングは叫んだ。
男が二人、距離を置いて睨み合っている。ここのところ扱いやすい拳銃が急速に普及して、各地で決闘騒ぎが乱発していた。無論、私闘である。だが男と男の勝負である。いかにも劇的で格好はいいし、無関係の人間にとっては刺激的な見世物だった。
「嘘だろぉ……」
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