レモネード

１

衆目を集めているはずだった。決闘となれば普段だって野次馬は集まるが、それにしても人が多いと思ったのである。殊に女が多かった。面白がって賭けをする男どもよりも心配顔の女が多いなんてのは、ラングも初めて見る。
　無理もなかった。ラングの店の前で対峙する男の一方はまるで子どもで、そんな細い腰で銃を扱えるのか疑問なほど華奢だった。陽の加減でシルエット以外の造作はよく見えないが、恐らくは十代の少年だろう。一丁前にガンベルトを巻いているが、ラングが見ている右側には肝心の銃が見えない。

（左利き？しかし本当にチビだな。銃の扱いなんて知ってるのか？）

　少年が相対しているのは手入れの雑な口髭が汚らしくカールした、こちらはどう見ても四十過ぎの男だった。中肉中背で日焼けした顔が脂ぎっており、百歩譲っても美男とは言えない。だが銃の扱いは慣れていそうな風貌である。
　人を外見ばかりで判断するものではないが、自然、人々の同情の秤は少年に傾いた。あぁ、こんなお天気のよい日に、こんなあどけない坊やが、こんな不細工な男に撃たれて死んでしまうとは！そんな気持ちが観衆の頭上に漂っているのが目に見えるようだった。

「さっきあの髭もじゃが怒鳴ってたんだけど、こないだ隣村で騒動があったろ？その因縁らしいよ」

ロズが囁くように教えてくれた。