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 その代わりに、キッドはそのときから、これまでの人生になかった思い出をたくさん作りだした。まず、ラングとマーロとカレンという、三人の年長の友人である。それから隣の酒屋をやっているマイケルとロズの夫婦。床屋のレオンの一人娘のサラはどうやら同世代の可憐な少女だった。衣料品店のテッドと女房。靴屋のジョルジュと新聞屋のジェット、郵便配達のベンはマーロの店の常連で、それから、町の人々と親身に付き合っている珍しい役人のブルース。平和な町の優しい人々は、小さな村でヤクザ者と暮らしていたキッドには特にあたたかく感じられた。  行く当てがあるわけでもないキッドを引き留めたのはロズだった。ラングとマーロも大賛成で、キッドもふたりのことは気に入っていたから、そのまま二階に住みついた。荒くれ者どもと狭苦しく暑苦しい暮らしをしていたキッドは、小さな部屋でも扱いに困ってしまって慣れるまでちょっと時間がかかった。荷物と言ったらわずかの金と、最低限の衣類、あとは銃ぐらいのもので、買ってもらった帽子しか余計な物がないというキッドの身軽さである。あんまり殺風景な自分の部屋に、どうしたらいいのかわからなくて、ただぼんやり、じっとベッドに座っていたこともある。     
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