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 ただ天井のしみを数えているわけにもいかないので、キッドは世話になる代わりに手伝いをさせてほしいと志願して、様々な雑用をこなした。店の掃除、買い出し、日によっては近所の誰かに呼ばれて何かしらの駄賃を貰って帰ってくることもあった。手先が器用な少年で、ときどきマーロの横に立って料理を習うようにもなったし、ラングと歌をうたって踊ればこれも大好評だった。頼まれれば例の早撃ちも披露した。ところがこれは、そのたびに的になる何かと銃弾が無駄になるとマーロが嫌がり、すぐにナイフ投げに替わったが、これもそんじょそこらの大道芸人顔負けの技術であったのでずいぶん人気があった。  キッドの身長は結局あまり伸びなかったが、表情に余裕が出てきたんじゃない、と、カレンが言ったのは、一年ほど過ごしてからだったと思う。彼らと過ごす内に悲しい思い出から閉ざしていた心が少しずつ和らいでいったのは事実で、元々無邪気ではあったキッドの笑顔に近頃親しみが加わり、ラングとマーロは眩しそうに目を細めて喜んだ。夜、悪い夢にうなされているような声も聞かなくなった。  そうして町の人々に見守られながら、キッドは結局、この町で二年間を過ごした。 二年の間にキッドが作った思い出の中でも、特に印象に残っていることが五つある。  ひとつは、夏、川に泳ぎに行ったことである。とにかく暑い日で、何もする気が起きないとラングが騒いだ。太陽の熱で溶けそうでとても体を支えていられない、かと言って、ただ寝ているのも息苦しくて耐えられない。暑苦しいから人混みも嫌だとわがままだった。 「キッド、お前なんとかしろ。元気が子どもの仕事だろ」 「そんな無茶があるもんか。おれだって死にそうだよ」     
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